HOME»地域別 » 医師求人の高齢化問題は患者だけではない。医師の高齢化は鹿児島を見てわかる

医師の求人高齢化は鹿児島を見てわかる

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医師急募!呼吸器内科、外科、消化器外科、血液内科…鹿児島県は南九州独特の風土のため、呼吸系疾患がどうしても多いこと、ウイルス性感冒が季節により急増することなど、対応する医師をその都度他県から招聘することでやりくりしています。ですが、問題は患者の高齢化ばかりではありません。医師の高齢化についても考えます。

奄美諸島の病院群は大規模病棟で占められる

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正式名称、奄美群島は鹿児島県に位置する長さ200kmにもなる島嶼群です。火山活動の活発な口永良部島をはじめ、宇宙ロケットの発射基地のある種子島、世界自然遺産として、島の面積の21%にものぼる地域が観光地となっている屋久島、など鹿児島県は実は多くの海洋面積と島嶼部を持つ複雑な医療地域と言えます。

こうした鹿児島県の医療事情は、やはり徳之島出身の徳田虎雄医師(元衆議院議員)の創業した「徳洲会病院」が大きな拠点となっているのは間違いのないところです。徳之島はもちろんのこと、屋久島、沖永良部島、奄美市、喜界町など、鹿児島の離島だけで8病院と5クリニック、鹿児島内陸では鹿児島市、指宿市、垂水市、鹿屋市に病棟医院、その他8箇所のクリニックを備えています。

これらは近県の沖縄でも同様であり、24時間診療している病院として、全国の徳洲会病院は非常に充実した診療システムを完備しています。徳洲会病院に関しては、様々な歴史や徳田虎雄医師の評価が分かれるところですが、純粋に医療を携わる側から見れば、現在は非常にチーム医療が行われ、行政もそれに託するところが非常に多いのが実情です。これは、
奈良県の天理市にある天理市よろづ相談所病院と同等の考え方であり、医師とすれば、よりよい医療環境で県民島民を臨床できることは、大切なことではないでしょうか。

年間360人、医師一人が全てを抱える

徳洲会病院と鹿児島医師会の間にいろいろな問題がある、というのは政治の話であって、現実にはなにもわだかまりはありません。ただ、鹿児島県内従来の総合病院やクリニックでは後継者不足などで、どんどん医師が高齢化しているのに対し、徳洲会病院はグループ化しているため、全国どこでも医師の希望にかなうような勤務地移動があり、また、介護施設も非常に多く抱えていることから、介護施設内科医や訪問医など、医師のQOLに大変配慮しています。

ですから、島嶼部でも勤務医として正職員医師が活躍し、看護師も若手が揃い活気に満ちているのも確かなのです。そのため、他の病院での医師不足が非常に顕著に見えてしまう現実はなんとも仕方のないところかもしれません。また、島嶼部では、基本的に全国8,000人の地域内科医の出身母胎である、自治医科大学卒業生で固まっています。彼らは9年でいずれも診療所を離職してしまいますので、自治体では新たな医師確保に要請運動を行わなければなりません。ですが、グループ病院の場合は、そういった必要がないため、好都合な面があるのです。

さて、南日本新聞(2014年9月4日版)の記事があります。ここには枕崎市の森産婦人科、森明人院長(57歳)の姿を描写しています。医師は午前中に2件の分娩を担当し、午後に帝王切開。ところが切迫流産入院の妊婦が予想外の陣痛を訴え、急いで鹿児島大学病院へ救急車の搬送を見送ることに。本来は付き添いをしたかった森医師ですが、最後の妊婦の出産時は午後10時。つまり、この日だけで4人の妊婦の分娩を診ており、病院から一歩も出られなかった状況だったのです。

枕崎市は薩摩半島南西部、目の前の海は南シナ海です。人口は22,000人。そして産婦人科は森医院ただ一箇所に過ぎません。1915年から100年間にわたって3代目の産科医院も医師ひとりで地域を支えるのは、限界を超えている…といいます。日本の産婦人科医1人が取り扱う分娩数は、年間平均128件。ですが、森医師はその3倍、実に360人もの分娩数を扱わなければなりません。

産科婦人科医の仕事は、母子の健康面を支え、異常がないかどうかを丹念に診察しても、異常分娩は減ることはありません。そして、問題は医師の平均年齢の上昇です。鹿児島県の婦人科医会の調査では、クリニック開業医の平均年齢は59.2歳。そして、鹿児島県内の2割は、この10年の間に廃業を考えている…というアンケート結果を発表しています。

鹿児島県の例はなにも特殊なことではありません。ですが、問題は地域連携が非常に薄いこと、そして地域行政の目玉に産婦人科医への優遇などが具体的に「市町村選挙」に取り入れられないことにあります。農業や漁業、工業は目に見える収入や利潤が人々に潤いをもたらします。ですが、医療は「住民の病変」や「若い人たちの環境」を想像しながら政策に羽根井していかなければなりません。

鹿児島県の問題は、この国の医療を支えているのが誰なのか、それも高齢化人口に集中する医療体制に目が向けられていたツケが、こうした今日の状況に反映されてきたことがわかります。今、若手医師が産婦人科を目指す場合、あえて大病院に勤務したほうがよい場合が多い…それが医師のQOLの為でもあるのです。

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