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長野県の「医療モデル」佐久総合病院の孤独な挑戦~県内求人募集

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人口10万人、群馬県との県境にある長野県東信部(中央、東端)にある佐久市はと言えば、佐久総合病院が有名です。農村都市であり、また工業メーカーが進出する産業都市でもあるこの地は、冬の寒さが厳しい割には積雪がそれほど多くない住みやすい地帯で知られています。佐久総合病院がなぜ全国に知られるようになったのか?その理由から、本来の医療についてまとめます。

長野県、農業は重労働、だから医療は必要という考え方

合計病床数351床の「佐久総合病院」、救急救命やICUなどの専門病棟を持つ「佐久医療センター」が450床。その他1つの「分院」と2つの「老人保健施設」が合わせて273床、というJA厚生連佐久総合病院(長野県厚生農業協同組合連合会= JA長野厚生連)は、1950年(昭和25年)に農業者の集まりであるJA長野厚生連が発足することで、病院がはじまりました。

ですが、病院が創立されたのは、戦時中の1944年(昭和19年)です。若月俊一外科医師が翌年3月に着任し、農民への出張医療を始めたことがきっかけで、病院の根本が地域医療を中心とすることが決まりました。若月医師は終戦後にアメリカ占領軍に「左翼思想者」と指摘され、身動きが取れなくなりましたが、住民が懇願したことで、初代院長として再度迎えられ、農業者特有の疾病を中心に、予防医学を取り入れて病院を発展させました。その結果、長野県は長寿日本一として東京や沖縄を抜き、健康な老人を多く「育てて」きているのです。

農業は「年数回の収入」だけ。だが、国民健康保険制度は受診ごとに窓口請求

「こう手」「腰曲がり」「農夫症」 …こういった病名を聞いたことはありませんか?「手が荒れてガサガサになる」、「田植えや作物の植え付けや収穫で、腰痛やしびれになる」「天気に左右される仕事で、繁忙期に睡眠不足になり不眠症、また倦怠期やバランスの欠いた食事で貧血になる」など…がその特徴です。

昭和30年代と和暦で言った方がわかりやすいでしょう。工業国家を邁進していた日本では、農業生産人口が減り、その中で農家の人たちが健康不安と疾病の増加という隠れた問題が発生していました。それ以前は病院にかかる、といえば「収穫時に農産物が売れ、現金収入があったときに診療費を払う」ものだったのが(1938年(昭和13年)国民健康保険法成立時は農山漁村民が対象だった)、1961年(昭和36年)には国民皆保険制度となり、全ての国民が通院ごとに診療代金を支払うことになったのです。これは、農家にとって大きな負担になったのは言うまでもありません。

長野県住民全員をスクリーニング検査対象に!その費用の捻出はどうする?

若月医師の手腕の最たるものは「健康診断」です。スクリーニング検査は身体測定、視力測定、肺機能検査、血液検査、尿検査、心電図にまで至りますが、開始当時の1974年(昭和49年)、窓口負担は3割で行政側が7割となっていました。この決め事に対して、当時佐久病院(総合の文字はなかった)の置かれていた自治体によれば、「そんな経費は出せない」という議員の声で一致していた、といいます。

ですが、若月医師の粘り強い説得が功を奏し、全国でも一早いスクリーニング検査が導入。それは、病院の経営がうまくいっていたことと、若月医師のコミュニケーション能力の高さ(飲みニュケーション)が一番だった、と当時の関係者は述懐します。つまり、住民や議員の懐に入って酒を酌み交わし、自治体を一体化させていったわけなのです。ですが、その費用はどうするか?これは意外かと思われますが、予防医学を推進することで、保健師を多く雇用し、その結果高額医療が少なくなることで、自治体が負担する医療費が減り、病院も経営的に黒字を保ち続けることができた…ということだったのです。

佐久総合病院の取り組みは全国展開している…わけではない理由

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これだけ注目され、健康県と長寿県の要因として予防医学へ舵を切った佐久総合病院の取り組みは、なぜ成功したのでしょうか?ここで考えたいのは、この病院が目指した医療は「地域の支え」に徹したことと関係がある点です。全国各地にある病院の多くは、病人がいるから(需要があるから)病棟を建てる(供給する)、という方程式に則っています。

しかし、これは人口減や高齢化の高まりがネックとなり「町立病院では患者が来ない」「医師は臨床数や臨床例の濃さを求めて、都会の病院へ転職してしまう」といった悪循環に陥ります。農業従事者が減るから、患者が来なくなる…のではなく、もともと全ての住民を病気にさせない取り組みをしてしまえば、病院としては健康体の住民を相手にすることができることになります。

それでは、みんなが疾病にならず、病院は儲からないのでは?そういう考えもあるでしょう。ですが、住民のスクリーニング検査の積み重ねで、健康調査のデータが蓄積され、病理の統計も構築できることが最大のメリットなのが忘れられがちです。佐久総合病院はスクリーニング検査の結果がこういう疾病につながり、的確な治療に貢献できる…という効果的な医療体制を敷いています。むろん、これは数十年もの間の病院と住民の信頼関係が基礎となります。ですが、多くの市町村で合併が進み、その度に医療をどうする…という転換期が繰り返されてしまいました。大事なことは、どんな自治体でも、住民が支える病院であること、病院が核となり、医療費が少ないのに医療産業が活発化していることなどの経済的な波及を見ることです。

佐久総合総合病院の孤独な戦いが、やがて全国に波及すること、それがどんな医師にも望まれる医療環境のひとつと言えるでしょう。

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