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島根県の医師求人と業務~都市と医療の適切な関係を考える

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隣接県での医療で対応する島根県民の現状。都市と医療の適切な関係を考える
東西に細長い土地柄が、医療地図に大きな影響を与えている島根県。県庁のある松江市は県東部先端にあり、西に隣接する出雲市にあるのが島根大学病院です。島根県というひとつの地域で見た場合、出雲市と松江市に集中する医療関係者と病院は、逆に県西部や南部ではどういう動きを生み出しているのでしょうか?都市と医療の抱えるジレンマを追います。

島根県津和野町で起きた「津和野共存病院」経営問題

島根県が境界線を引く西の先にある津和野町。人口約9千人の小さな町は、産婦人科クリニックを持っていません。そのため、津和野町が中規模病棟を抱える病院を建設し、福祉医療センターとして立ち上げた「津和野共存病院」は町内唯一の90床を持つ入院病棟を持つ「出産できる」病院でした。2008年(平成20年)12月、この病院を運営していた「石西厚生農業協同組合連合会」が突然破産してしまいます。

農業協同組合が経営母体となる病院は、全国にありますが、実はこうした破産や経営譲渡は珍しいことではありません。栃木県にあるJA栃木厚生連は、下野市にある石橋総合病院(県内中規模)は、2013年4月に経営譲渡。3箇所あったJA栃木厚生連の病院は全て別法人に委ねられました。

こうした問題は突然起きるわけではありません。その多くは「外部医師のよる健診」などから患者が薄々気づくものです。そもそも、建設母体と運営母体が別の場合、オーナー側がその経営成績についての情報開示を求めます。とりわけ多くの人々がお金を出資する共同体には、金融機関である信用組合、信用金庫、そして相互会社である生命保険会社など、様々です。ですが、医療の場合は規模別の助成金があるわけではなく、建物は減価償却することで、資産価値が生まれるわけでもありません。ましてや、人口1万人前後の自治体では、政治が町内会の延長でしかないわけで、医師や看護師にとっては面倒な争いに巻き込まれることが多々あるのです。

松江市は全国トップクラスの医療都市

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島根県の県庁が置かれる松江市は「首都圏や大阪圏からの移住」に適した都市として、最高ランクに位置しています。まずは、そのロケーション。2015年(平成27年)3月28日付の日本経済新聞で発表された「経済産業省が調査した、日本一住みやすい都市」では、松江市が堂々の一位!となりました。地震の少なさ、治安の良さ、環境面など確かに住みやすい条件は揃っており、医療面も松江市立病院、松江赤十字病院、松江生協病院、隣の出雲市にある島根大学付属病院などを加えると、救急搬送のスピードや医師と看護師の住民の数との割合、そして看護師の求人数など、常に任期のある診療科が「適度な待機時間」で診療してもらえることなどが好評、なのです。

島根県は人口70万人を割り、年間5,000人ほど減少している自治体です。そして、松江、出雲、雲南といった東部に人口、産業、医療関係が集積しており、その傾向はますます高まっています。ですが、島根県には竹島や隠岐の島などの離島があり、国際問題も含めて重要な立地であることも確かです。ですが、人口減は最終的には医療集積がまずます高まり、過疎地では訪問診療と定期集団健診以外の道は閉ざされてしまうでしょう。とすれば、島根県には大変な危機感があってもよいはずなのですが、実際にはそのような動きは見られません。なぜでしょうか?

山口県が島根県東部の住民の医療サービスを引き受けている

隣接県の病院に通院する…これは首都圏ではよくあることです。埼玉県川口市から通勤するサラリーマンや、千葉市の幕張にオフィスがあるため、東京都江戸川区から通勤するビジネスマン…こうした移動に欠かせない通勤手段が豊富にある首都圏や関西圏は、患者が医療機関を選択でき、通勤帰りに通えることも可能です。そして、通院には「徒歩で」行けることから、便利さはこの上ない状況です。

ですが、県境の過疎地の場合は、そもそも交通手段は自家用車に限られ、高齢者にとっては天候次第で「家に引きこもらざるを得ない」状況に陥ります。自治体は住民サービスと称し、訪問医療を推進しますが、積極的に関与しようとする医師はほとんど皆無でしょう。北海道夕張市は全国に「先駆けて破綻」してしまった「市」ですが、市立病院はたった一人の医師の手に委ねられ、現在は診療所に格下げられてしまいました。

こうした事実からも、歴史的な風情で知られる津和野町の医療は地方交付税投入でしか運営できませんし、遠方の島根大学の研修医の応援を頼むしか方法はありません。ですが、逆に言えば、山口県側から見た医療体制を考える手もありえます。現実、島根県と山口県、鳥取県は越県した診療した場合の速やかな報酬処理を行っており、子供の診療費に関しても無料の措置を行っているのです。

世の中には、様々な考えを持つ医師がいるのは、医師自身が「人を見る」職業ゆえ、でしょう。患者の傾向によっては自分の生涯年収にどう響いてくるのかが、だんだんとわかってくるのは自明です。都市とは言っても、衰退しつつある県の一角、そして勤務病院によっては他県にある病院や福祉施設を吸収合併し、医師自身が異動対象となって農村部へと移る…

その動きはある日、突然やってきます。経営母体がどうなるか…医師の就職は運もあることを知っておくべきでしょう。

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