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奈良県の医師求人~救急搬送で問題山積。

救急搬送で問題山積。その後の奈良県の対応と医師の考え方の違いを読む
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2006年(平成18年)8月7日、奈良県大淀町の「救急搬送問題」は、医療業界とマスコミ、一般社会を巻き込んだ大きな「事件」へと発展しました。奈良県の医療状況といえば、この影響は今だに尾を引いています。ですが、一般社会の見方はマスコミとは別のところにあるようです。奈良県には、本当に問題が続出していたのでしょうか?検証してみましょう。

一次救急に「ただ乗り」する患者は減らない

消防庁が公表している「救急搬送」実態に、興味深いものがあります。平成13年と平成23年の比較だけを抽出して記載してみます。平成13年の全国値「4,190,897人」・奈良県値「47,739人」、平成23年「5,182,729人」・「57,045人」…この数値から読み取れることは、この10年で全国・奈良県とも同じような増加傾向が認められ、奈良県では救急搬送患者が1万人増加したことがわかります。

また、奈良県が公表している一次救急患者数には、「53,038人」という数字があり、これは平成23年の休日夜間応急診療所の受診者数。この6割は小児救急ですが、救急搬送患者と救急外来患者を合わせても6万人から8万人程度はいるのではないか…と考えられるのです。

ちなみに、平成13年の奈良県の人口は「1,460,684人」(10月1日)、23年は「1,417,092人」ですので、約4.3万人の減少。ですが、救急搬送の総数は人口減少分を大きく上回るわけで、それだけ医療機関と消防局の多忙さがクローズアップされるわけです。よく考えてみたいのは、10年間で人口が4万人も減っているにもかかわらず、患者数が増加している原因に「一次救急」のただ乗り患者が多数含まれていることは確かです。
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その根拠は奈良県立医大に周産期医療センターが完備された後(平成18年の事件後に整備)でも、一次救急患者は減っていないこと、そして年間の出生数は奈良県で「1万人」ほどで、年間の小児(仮に5歳児までを想定すると、0歳から5歳までで計6万人)数を考慮し、平成23年の小児救急搬送数を3万人としても、ただのり搬送患者は1万人は下らない、というのが専門家の考え方です。

確かに、奈良県は救急システムを導入したが…

奈良県の救急搬送に関する問題は、ただのり患者の増加だけではありません。もっとも重い課題が三次救急医療機関の少なさです。救急車からの紹介回数4回以上・重症以上患者の搬送件数比率を見ると、平成21年の全国値は3.2%であるのに対し、奈良県は11.8%。つまり、救急隊員が患者のいる現場に到着し、最寄りの医療機関に受け入れ要請をかけても4回以上断られる比率が10%以上…ということを表しているのです。

奈良県の問題はハード面の不足なのでしょうか?それとも極度な高齢化で潜在的な三次救急患者が全国平均を上回っているのでしょうか?

問題は奈良市と東和・中和・西和地区の医療機関数と比較して、南和地区の医療機関が極端に少ないことが挙げられます。二次保険医療に関しては奈良から西和までは、2,500床から3,500床と十分なのに対し、南和地区は800床。二次保険医療は療養病床ですから、急変した患者を受け入れる二次救急指定、三次救急指定病院が中核病院としてひとつは欲しいところです。

ですが、実際には大淀町立大淀病院、奈良県立五條病院、そして国保吉野病院の公立3病院が受け入れるかどうか…という段階がここ十数年来変わっていません。過疎化が進む地域の集合体である南和地域は、北部に県最北にある奈良市から距離も遠く、奈良市の消防局に対して救急搬送中の救命体制が低いこと(救急隊員の搬送判断の不的確さ)などがあること、そして何より南和地区の公立病院からの医師・看護師の離職などで、全てが悪循環に陥っているのが現状です。

奈良県では、今後も「急性期パニック」は起こりうる

結論から言えば、奈良県で医師として活動する場合は、南和地区は「新たな公立病院、救急病院」が開業されるまでは医師としての力を発揮できない状況が続くでしょう。マスコミは今後も人口過疎問題と医療格差問題をテーマにインシデントに焦点を当てる可能性が高いでしょうが、医師が積極的に行政に向かって動くスケールメリットは非常に少ない、と思われます。

奈良県の医師の中には「奈良県の消防隊員の救急搬送基準はあいまいだ」といった声がありますし、「そもそも、医師以外に診断できる身分などありえない」などと批判する声も多数あります。ただ、ここは冷静に考えたほうがよい局面です。医師はやはり患者あっての存在ですので、常に患者と向き合える環境にいるのが最適だ、ということです。

もうひとつは、麻酔科医や放射線医などのチーム医療でなければ、患者の医療にかかる負担(時間的・経済的)は増していくという現実です。麻酔科医がいないから、オペができない、結局患者の受け入れができない…こういう現実は、いくらマスコミに説明しても、理解してくれません。逆に一般市民の方が「手術にはこれこれの医師や看護師」がいないと、不安だ…とわかってくれるものです。

奈良県の医師の疲弊は「ひとりで受け持てる限界を超えているのに」叩かれるという問題。ならば、人員が整った地区で勤務するか、住民の理解があるところ(救急搬送の度合いが正常な地区)で勤務すべき。これはあくまでも正論であり、これを正すのは行政の仕事だからです。

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